平成27年12月21日 中央教育審議会答申

「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」のポイント

文部科学省ホームページより



はじめに

 平成27年年12月、中央教育審議会において、「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申)」がとりまとめられました。この答申では、今後の地域における学校との協働体制の在り方について、地域と学校が連携・協働して、地域全体で未来を担う子供たちの成長を支え、地域を創生する「地域学校協働活動」を推進すること、そのために従来の学校支援地域本部等の地域と学校の連携体制を基盤に、新たな体制として「地域学校協働本部」を全国に整備すること等が提言されています。
 また、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の目的として、学校を応援し、地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを進めていく役割の明確化や、設置の努力義務化など、一層の推進を図るための、制度面・運用面の改善とあわせ、財政的支援を含めた条件整備等の方策を総合的に講じること等が提言されています。
 さらに、文部科学省では、平成27年12月にまとめられた3答申(上記答申、「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」及び「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について〜学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて〜(答申)」)の内容を推進していくため、具体的な施策と工程表をまとめた「『次世代の学校・地域』創生プラン」を平成28年1月25日に策定いたしました。
 文部科学省としては、答申を踏まえつつ、本プランを着実に実行していくため、地域と学校の連携・協働の推進に向けて、必要な制度改正や予算の充実を図るなど、具体的な取組を進めてまいります。
本事例集は、地域において、「地域学校協働活動」の推進、「地域学校協働本部」の整備、コミュニティ・スクールの促進といった、答申の提言内容に沿った活動に既に積極的に取り組んでいる事例を紹介しています。教育委員会や地域、学校関係者の皆様におかれましては、本事例集や平成27年度に文部科学大臣から表彰を受けた活動を紹介した『平成27年度の地域による学校支援活動事例集』の取組も参考にしていただきつつ、それぞれの地域や学校の特色や実情に応じて、地域と学校の連携・協働の推進に取り組んでいただければ幸いです。

                                     平成28年4月
                                           文部科学省
                                               生涯学習政策局社会教育課長  西井 知紀
                                               初等中等教育局参事官      塩崎 正晴


 
 昨今、地域の教育力の低下や家庭教育の充実の必要性が指摘されています。また、学校が抱える課題は複雑化・困難化しており、教職員のみならず社会総掛かりで対応することが求めら れています。このため、これからの厳しい時代を生き抜く力の育成、地域から信頼される学校づくり、社会的な教育基盤構築等の観点から、学校と地域がパートナーとして連携・協働するための組織的・継続的な仕組みが必要となってきています。こうした背景を踏まえ、平成27年12月に中央教育審議会において取りまとめられた「新 しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申)」において、これからの地域と学校の目指すべき連携・協働の方向性として、以下の3点が示されております。


@地域とともにある学校への転換
 開かれた学校から一歩踏み出し、地域の人々と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」に転換する。
A子供も大人も学び合い育ち合う教育体制の構築  
 地域の様々な機関や団体がネットワーク化を図りながら、学校、家庭及び地域が相互に協力し、地域全体で学びを展開していく「子供も大人も学び合い育ち合う教育体 制」を一体的・総合的な体制として構築する。
B学校を核とした地域づくりの推進  
 学校を核とした協働の取組を通じて、地域の将来を担う人材を育成し、自立した地域社会の基盤の構築を図る「学校を核とした地域づくり」を推進する。

このような方向性に基づき、答申では、
○地域と学校が連携・協働して、地域全体で未来を担う子供たちの成長を支え、地域を創生する「地域学校協働活動」を推進すること、この活動を推進するための新たな体制として「地域学校協働本部」を整備すること
○制度面・運営面の改善とあわせ、財政的支援を含めた総合的な推進方策により、コミュニティ・スクールを推進すること  
 などが提言されております。

◆「地域学校協働活動」とは
 「地域学校協働活動」とは、地域と学校が連携・協働して、地域の高齢者、成人、学生、保護者、PTA、NPO、民間企業、団体・機関等、幅広い地域住民等の参画により、地域全体で未来を担う子供たちの成長を支え、地域を創生する活動です。具体的には、学校支援活動(登下校の見守り、花壇等の学校環境整備、授業補助等)、放課後子供教室、土曜日の教育活動、家庭教育支援活動、学びによるまちづくり、地域社会における地域活動等、幅広い地域住民等の参画によって行われる様々な活動が考えられますが、それぞれの地域や学校の実情や特色に応じて、創意工夫をこらしながら、多様な活動を推進していただくことが重要です。

◆「地域学校協働本部」とは   
 「地域学校協働本部」とは、従来の学校支援地域本部等の地域と学校の連携体制を基盤として、より多くのより幅広い層の地域住民、団体等が参画し、緩やかなネットワークを形成 することにより、地域学校協働活動を推進する体制です。地域学校協働本部の整備にあたっては、従来の学校支援地域本部等を基盤として、「支援」から「連携・協働」、「個別」の活動から「総合化・ネットワーク化」へと発展させていくことを前提とした上で、
 @コーディネート機能    
 A多様な活動(より多くの地域住民等の参画による多様な地域学校協働活動の実施)
 B継続的な活動(地域学校協働活動の継続的・安定的実施)  
の3要素を必須としていただくことが重要です。   
 地域学校協働本部においては、学校支援活動、放課後子供教室、土曜日の教育活動、家庭教育支援活動、学びによるまちづくり、地域社会における地域活動等、様々な地域学校協働活動を推進していくこととなりますが、具体的にどのような内容の活動を行うかについては、地域や学校の実情や特色、同本部の発展段階に応じて、それぞれの地域において検討いただくこととなります。すなわち、地域学校協働本部においては、このような様々な活動の全てを最初から行うことを求めるのではなく、子供たちの成長にとって何が重要であるかについて地域と学校とでビジョンを共有した上で、可能な活動から着手し、徐々に活動内容の充実 を図っていくことが重要となります。   
 学校支援地域本部等の基盤となる体制が既に構築されている地域においては、その体制を基盤として、コーディネート機能の強化、より多くの地域住民等の参画による多様な活動の実施、活動の継続的・安定的実施を目指して、地域学校協働本部へと発展させていくことが期待されます。また、これまでに学校支援地域本部等の活動が行われていない地域においては、まずは最初の一歩として、学校支援活動、放課後や土曜日等の教育・学習支援活動、地域活動等の何らかの地域学校協働活動を開始する基盤づくりを加速し、地域学校協働本部を 整備していくことが期待されます。   
 地域学校協働本部を整備し、地域学校協働活動を推進していくためには、コーディネート機能を強化することが不可欠であり、地域住民等と学校との連絡調整などを行う「地域コー ディネーター」の配置、人材の育成・確保、持続可能な体制づくりを推進していくことが重要となります。都道府県・市町村のそれぞれの地域において幅広く地域学校協働活動を推進していくためには、地域の実情に応じて、地域コーディネーター間の連絡調整、地域コー ディネーターへの助言・指導、未実施地域における地域学校協働活動の推進等を行う「統括コーディネーター」を委嘱・配置するといったことも重要な方策となりえます

◆「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」とは   
 学校と地域がパートナーとして連携・協働するために、学校は「地域に開かれた学校」から一歩踏み出し、地域でどのような子供たちを育てるのか、何を実現していくのかという目標やビジョンを地域住民等と共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」へと転換していく必要があります。地域学校協働本部がコミュニティ・スクールとともに活動を推進することにより、学校教育を含めた子供たちの教育の質を格段に向上させること等も期待できます。   
 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は、学校と地域住民や保護者等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」に転換するための仕組みです。この制度を導入することにより、地域の声を学校運営に生かし、地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりを進めていくことができます。

コミュニティ・スクールを導入することのメリットとして、以下の3つが挙げられます。

組織的・継続的な体制の構築=持続可能性
○校長や特定の教職員の異動があっても、学校運営協議会によって地域との連携・協 働体制 がそのまま継続できる「持続可能な仕組みである」。

当事者意識・役割分担=社会総掛かり
○具体的な権限を有していることから、地域が学校運営に対する当事者意識を分かち 合い、ともに行動する体制を構築できる。

目標・ビジョンを共有した協働活動
○「校長が作成する学校運営の基本方針の承認」を通して、学校や子供たちが抱える 課題に対して関係者がみな当事者意識を持ち、「役割分担をもって連携・協働による 取組ができる」。

◆地域学校協働本部とコミュニティ・スクールの一体的・効果的な推進
 答申の提言を実現していくには、それぞれの地域や学校における実情や特色を踏まえつつ、地域学校協働本部とコミュニティ・スクールが相互に補完し高め合う存在として、両輪となって相乗効果を発揮していくことが重要です。それぞれの地域や学校においては、本事例集で取り上げた事例も参考にしていただきながら、地域学校協働本部とコミュニティ・スクールが両輪として一体的・効果的に機能を発揮していくことができるよう、それぞれの地 域や学校における実情や特色に応じて、整備を進めていくことが期待されます。